人間の視覚系は、物体の動きや形といった基本的な感覚属性から、時間や空間、さらには質感や生態学的価値、話し相手の意図や感情状態にいたるまで、環境に存在するありとあらゆる「もの」や「こと」を推定し、リアルな世界の認識を達成しています。本研究室では、この感覚情報処理の計算理論およびその神経計算の情報表現・アルゴリズムの理解を目指した研究を行います。様々な刺激に対する人間の知覚・行動から脳情報処理を推定する心理物理学に、機械認識やコンピュータグラフィックスといったメディア情報学を融合したアプローチを採用します。触覚や聴覚、多感覚情報の統合メカニズムや、自己認知に対する認知(メタ認知)も研究対象に含みます。人間に匹敵する能力を備え、かつ人間の脳神経回路との相同性が注目されているAI(人工神経回路)との比較を通して、人間の認知情報処理のより深い理解を目指します。
革新的なメディア技術を生み出すひとつのカギは、人間の認知メカニズムをうまくだますことにあります。例えば、ディスプレイ技術や拡張現実技術において、感覚系の特性を利用することによって、感覚入力の完全な物理再現をする方法に比べて効率が大幅に向上したり、原理的に不可能に思えたことが可能になったりします。本研究室では、このような知覚ベースのメディア技術を開発し、認知脳科学の成果を情報工学に積極的に活かします。
コミュニケーションの脳メカニズムを解明するために、脳波や機能的MRIなどの脳機能計測手法を用いた実験を進めています。特に、コミュニケーションを実現するための脳状態が脳波などの早い活動によりダイナミックに変化していることに着目して、脳機能計測実験をおこなっています。また複数の脳計測技術を組み合わせることで、人間の脳活動を詳しく解析するための新たな技術開発も行っています。